ソーシャルゲームのこと
ソーシャルゲームのこと
今日本では、Wiiやプレイステーションなど据え置き型のゲーム市場よりも、スマートフォンで遊べるパズル&ドラゴンズのようなソーシャルゲームが大きく売り上げを伸ばしています。 このことについて、積極的に遊んでいる方も、関心がない方も、どちらかといえばよくないと考えておられる方もいるはずです。 よくないと考える方の、よくないと思う理由として、課金を前提とした射幸心を煽るシステムであること、また据え置き型ゲームの衰退を憂う、などの理由があると思います。 たしかに、ヒットすれば開発費用をはるかに上回る売り上げを出せるソーシャルゲームは、日本中の若手エンジニアにとって就きたい業界になっています。 このような状況について筆者の思うところを書いてみたいと思います ソーシャルゲームまでのゲーム 日本のゲーム業界で据え置き型ゲーム機は、古くはカセット、DVD−ROMなど、一本の完結したメディアでのリリースをされていました。 これは開発環境一式をゲーム機メーカーから貸与、あるいは購入し、開発を終えた後にメーカーの審査をうけライセンスを与えられて発売されるというサイクルがありました。 ソーシャルゲームは、スマートフォンの開発ツールとアプリストアの審査基準さえ通過すれば、個人でも始めることのできるものです。 参入障壁の低さもあり、新興の中小企業でもあらたな参入の余地があります。 据え置き型のゲームは一本のメディアの中で完結しているので、ゲーム機の性能に依存し、追加的な要素は与えられないものでした。 現在コンピュータはほとんどがインターネットに接続されていて、インターネット上のサーバーと、ゲームソフトというクライアントに分かれ、オンラインで楽しむ作りが取り入れられています。 ただ、日本は世界的な流行の中で、オンラインゲームについては幾分かの遅れがありました。 世界中のユーザーをターゲットにした大規模なオンラインゲームはとても負荷が高く、障害などを起こさず運用するためには、十分な技術をもった、たくさんのデータベースエンジニアやサーバーエンジニアのチームが必要となります。 運用費で莫大な費用が必要であれば、パッケージとして完結する据え置き型のゲームの方が売り切り型で楽な部分もあります。 しかしオンラインのゲームのユーザーが増加するにつれ、日本のゲーム業界は世界の流れに乗れなくなってきていました。 ソーシャルゲームとエンジニア ソーシャルゲームはソーシャル、人とのつながりが大きな要点になっています。 ネットワークを介し、複数人数で遊ぶためには、ゲームというクライアントとサーバーの形をとらざるを得ません。 サーバーに必要とされるのは、ユーザーの情報、ユーザーの利用するキャラクターやアイテムの情報、ユーザー間のメッセージのやり取りを蓄えることで、大きな役目を持つのはやはりデータベースとなります。 ユーザーがゲームを起動するたびに、このスマートフォンとデータベースサーバーとのやり取りが始まりますので、同時にどれぐらいの人数がアクセスするかで、サーバーの能力を決定しなければいけません。 その見積もりを間違えれば、サーバーとの通信障害でユーザーが離れてしまいます。 サーバーとゲームがずっとデータのやり取りをしていると、その間の通信も発生しますし、サーバーにも大きな負荷を与えてしまいますので、一度クライアントにデータを渡して、接続を切らなければいけません。 そこからゲームを始める際に、ユーザー側のキャラクターの組み合わせや、挑戦するゲームのコースなどから、ゲーム内で現れる敵などとゲームの結果をクライアントに送り、再度クライアントの接続を切ります。 あとはユーザーがゲームに成功するかどうかで、ユーザーのデータにアイテムなどを追加するか、追加しないかを受け取って、再度サーバーとゲームの接続を切ります。 現在はクラウドのような、スケールアップできるサーバーの基盤があり、少ないスペックのサーバーからでもゲームをリリースでき、ユーザーが増加するにつれ、サーバースペックを強化していく方法をとれます。 またイベントなどアクセス集中の際に、適宜サーバー能力を強化し、あまりアクセスのない時間帯はサーバー費用を節約するために能力を低下させるような動的な管理も必要となります。 そのうえでサーバーとクライアントの通信の最適化も必要となり、データベースや、ネットワークエンジニアにはたくさんの課題があります。 こういった一般消費者向けの、動的なサーバ管理を必要とするオンラインサービスはあまり沢山ない状態で、このソーシャルゲームの隆盛は多くの経験あるエンジニアを育てているのではないかと考えます。 ゲームの価値 コンピュータゲームは生まれた時から、コンピュータの実用とは正反対の形で存在し、娯楽のために提供されるものです。 かつてファミコンが世界中でブームになった際も、賛否の意見はあったはずです。 特に電子媒体にお金を支払う、ということ自体に抵抗があった時代です。物としての玩具ではなく、プログラムとデータに支払われるお金です。 現在はこのような抵抗はほぼなくなってきてはいますが、ゲームのユーザーも拡散してしまい、1パッケージとしてのゲームの売り上げが低下しています。 そんなかで、ゲームメーカーとして利益率の高い製品を販売する必要の中で生まれてきたもの、それがソーシャルゲームでしょう。 それを選択するかどうかは、ユーザー次第で、それはいつの時代も変わらないことです。