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Apple Watchはスマートウォッチではない?

Apple Watchの発売が4/24とあとひと月を切りました。

このデバイスがどういった層が買い求めるのか、あるいはAppleとして勝算があるのか、今欲しいと思うかどうか、など様々な意見をWebサイトで見ることができます。

伊勢丹新宿店にApple Watchの専門店がオープンするなど、Apple WatchはこれまでのApple製品の展開とは異なった動きを見せています。

ウェアラブルコンピュータ、スマートウォッチとして先行する製品は様々にあり、その中でも最上位モデルで200万円を超えるモデルも存在するApple Watchはどのような成果をAppleにもたらすのでしょうか。

Apple Watchの価値

Apple WatchがAppleの売り上げを大きく引き上げるかといえば、おそらくそのような効果はないと考えます。

少なくともこの2年、3年でApple WatchがAppleの収益の中で占めるシェアはわずかなもになるでしょう。

Appleは前4半期で700億ドル以上の売り上げを出していますが、Apple Watchはその中の一割まで育つものであるかは今のところ不明です。

iPodなどもたくさん出回っているように見えて、売上高の3%程度の「その他機器」というカテゴリに収まっています。

売上高としては、すぐにはiPodさえ超えることもできなさそうです。

AppleはApple Watchの存在価値を売上高に設定していないように思えます。

Appleのブランドとしての向上を目的に据えているように見えます

スマートウォッチではなくリッチガジェット

Apple Watchのことを、Appleはスマートウォッチとは表現していません。

Apple Watchの目指すところはリッチガジェット、ではないでしょうか。

ガジェットは様々なメーカーから時代に合わせて生まれては消えていく存在です。

そこにユーザーが求めるのは機能とコストパフォーマンスで、スマートフォン自体もその一つとみなしてもいいでしょう。

Apple Watchの目指すのは、スマートなウォッチではなく、腕時計のイメージを引き継いだリッチなガジェットなのではと考えます。

それは今までになかった製品カテゴリです。

スマートウォッチとして、スマートフォンと連携して通知を表示するものや、ランニングの補助などスポーツ機器としてのリストバンドはすでに何社からも出ています。

Apple Watchは機能としてこれらのものと似通っていますが、高級感を追い求めるガジェットとすれば、コンセプトがそもそも違います。

もっとも安価なApple Watch Sportは4万円代からですが、酸化被膜アルミニウム製と見た目としても一番質素な素材でできています。

Apple Watchが機能だけの従来のガジェットであればこのモデルで十分なはずですが、おそらくApple Watch SportでApple Watchを体験してしまうとワンランク上のステンレス製のApple Watchが必ず欲しくなる、そういう製品なのではと想像します。

Apple Watchが全くはまらない層にまでApple Watchを売り込むための戦略はなく、Apple Watchを必要とする層はやがてアイテムとしての価値を見出していく。

その過程で、Apple Watchに魅力を感じる層がApple Storeを訪れて、Apple Watch Editionなどのモデルを購入する動線ができます。

iPhoneユーザーのごく一部に訴求するだけでもApple Storeに訪れる層が変化する可能性があり、機能ではなく高級感を求めて来店する顧客が増えればAppleのブランドのイメージは向上します。

ガジェットとしての強み

ガジェットは手に入れた人にとって、見せて回りたいもの、自慢したくなるものです。プロモーションはユーザーがしてくれる、というのがガジェットの強みです。

Apple Watchも初期に飛びついた人が、このプロモーションをしてくれますし、それは高額モデルほどその欲求は強くなるでしょう。

全く不要と思う層にとっては不発に終わったとしても、新しいもの好きで興味があればとりあえず手にとってみよう、使ってみようとなるきっかけになります。

やがてその何割かがApple Watchを気に入って、手に入れたモデルよりもより高額なモデルが欲しくなるというサイクルが作れれば、Apple Watchは広まり、価値を見出されていくようになるでしょう。

このようなものが他のブランド、例えばAndroidでスマートフォンのシェアをリードするGoogleに可能かといえば、そもそも製造メーカーではないので難しいのかもしれません。

かならずしもここで想定するようなものではなく、新奇性の強いガジェットだった、と過去形で語られるようになるかもしれません。

ただAppleが今持っているブランド力を元手にしてできる戦略としては十分な価値があるのではないかと思います。