コンピュータの抽象化
コンピュータの進歩の歴史はどのようにしてコンピュータの機能を抽象化するか、という歴史です。
もともとはコマンドを文字で入力し、コンピュータが処理して結果は文字で帰ってきます。
今でもWindowsではコマンドプロンプトやPowershellとして残っている抽象度の低い操作方法です。
Windowsをはじめとしたマルチウィンドウシステムではマウスを使うことで一気に抽象性が上がります。
もともとOSが持っていたディレクトリという構造をフォルダという形に見せて、紙の書類をフォルダにまとめるようにして扱うように見せました。
deleteというコマンドで削除していたファイルも、マウスでファイルをつかんでゴミ箱に入れるという操作で可能にすることで、実生活でよく行う行動と同じものだと理解することができるようになります。
ファイル実行もファイルをダブルクリックする、という操作さえ覚えれば違和感なく実行することができます。
スマートフォンではさらにファイルという概念をなくそうとしています。
スマートフォンのアプリはパッケージ化された複数のフォルダによって成り立っていますが、ユーザーはフォルダ自体をすでに意識することはありません。
指で触れればアプリが実行される裏では様々な処理が行われますが、それはユーザーの目に触れることはありません。
次の段階の抽象化は、コンピュータを持っていないと思わせるぐらいの抽象化になるのではないか、と考えています。
SiriやGoogle音声検索などの音声アシスタントは、今はスマートフォンというコンピュータに対する操作であることがはっきりしています。ボタンなどを押しスマートフォンに呼びかける操作であるとユーザーは捉えているはずです。
それがさらに一段階抽象化すれば、空気に話しかければ答えが返ってくるという形が当たり前になるのかもしれません。
自宅にいる家族に対して、天気予報で明日の天気はどう言っていたかを聞いたり、家を出るときは戸締りをお願いしたり、などは違和感なく自然なやりとりとして行われていることです。
音声アシスタントがもっと自然なやりとりができるようになれば、そのようなやりとりは人としているようになり、コンピュータを媒介していることは抽象化されてしまうでしょう。
音声入力を正確に行うためには端末からインターネット越しに音声をクラウドなどのサーバーに送り、結果を返すことになります。
そのような高度なやりとりについて一切知らなくても使えるということこそコンピュータの抽象化の意味です。
より高齢者やコンピュータに対する苦手意識のある方も自然とコンピュータのユーザーとなって便利に利用でき、またサービス提供の企業とすればビジネスチャンスが増えることになります。